夏・馬産地だより 秋を待つ注目馬たち

ヴァーミリアン

前人未到の道なき道を行く絶対王者。それがヴァーミリアンだ。

ディープインパクトと同じ年に、同じ牧場で生まれ、同じ年にデビューした。歩む道は違っても、その看板は色褪せることはない。 7年連続JRA(交流含む)重賞制覇。GI(jpnI含む)レース9勝、ダート競走において史上初の、そして唯一の10億円ホース。さらにはJRA重賞(交流含む)13勝。いずれも過去のあらゆる名馬を抑えてトップの数字だ。

その長い競走生活の間には500キロを超える雄大な馬格から繰り出すスピードとパワーで幾多のライバルたちを突き落としてきた。5歳時の川崎記念ではアジュディミツオーに6馬身の差をつけ、そして同年のJBCクラシックではフリオーソの夢を打ち砕いた。ジャパンカップダートは衝撃のレコード勝ち。さらに東京大賞典は再びフリオーソを突き放した。6歳になってフェブラリーSでは、当時GI(jpnI含む)史上最多タイの7勝目を狙ったブルーコンコルドを振りほどいて、園田競馬場のJBCクラシックでは若きサクセスブロッケンに貫禄を示すなど、圧倒的な強さで長期政権を築き上げてきた。

しかし、その絶対王者に翳りが見え始めてきた。昨年暮れの東京大賞典ではサクセスブロッケンにハナ差遅れを取った。川崎記念ではフリオーソに貫禄を示したが、帝王賞ではまさかの大敗。負けるはずのない相手に足元をすくわれるケースが増えてきた。ここまで7年間の競走生活で、6歳年上から4歳年下まで11世代の相手と戦ってきた目に見えない歴戦の疲れが王者の体を蝕んでいるのだろうか。

ヴァーミリアンを知り尽くしているノーザンファーム早来の林宏樹厩舎長は「海外遠征なんかもありましたが、もともと間隔を空けながら使ってきた馬ですから、言われるほど年齢を重ねたとは思っていません」と本馬を評している。「大人っぽいのは若いうちから」と冗談交じりに白い歯を見せた。「ただ、やっぱり少し疲れが抜けるのに時間がかかるようになったかなっていう思いはあります。今回は、目標(JBCクラシック)までたっぷり時間があるので、焦らずに進めていこうと思っています」という。

8月中旬現在、周回コースでのキャンターと屋内坂路コースでのメニューを中心に週に2度ほど強く追われている。猛暑となった今年は、夏場にややペースを落としたが、その後は史上初のJBCクラシック4連覇へ向けて、上昇カーブを描いている。

ヴァーミリアンの前に道はなく、ヴァーミリアンのあとに道はできる。その道を誇り高き王者は、この秋も歩き続けることだろう。

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