夏・馬産地だより 秋を待つ注目馬たち

マイネルアワグラス

無機質なガラス管の中で動く砂が、過ぎ去った時間の長さを告げる。焦らず、慌てず、確実に動くそのペースが、独特の安心感を与えてくれる。 アワグラス、とは「砂時計」という意味だそうだ。

マイネルアワグラスのレースは、その落ちる砂のように独特のペースを刻む。500キロを優に超える大きな馬体。ゆったりと大きなフォームで、自分だけのペースを守り続ける。レースの前半は後方に位置するが、残り1000mくらいから外目をとおって進出し、そしてゴール前では優勝争いに顔をのぞかせる。重賞競走の舞台で先頭でゴールを駆け抜けたのは4歳時のシリウスSのみだが、勝ちきれない代わりに、ダートに限れば堅実だ。これまで28戦のダートキャリアの中で掲示板を外したことは4回しかない。 「もう少し前に行こうと思えば行けるのですが、そうすると末脚が鈍ってしまう。そんな馬なんです」と騎乗スタッフが悔しそうな表情を浮かべる。「前半に、ある程度の位置につけられて、そして同じような末脚を使えれば言うことなしなんですが」という。

そんなマイネルアワグラスに少しづつだが変化が見え始めている。昨年暮れの名古屋グランプリでは2番手から競馬を進め、春のダイオライト記念では中団をキープして2着を確保。芝の日経賞でも直線ではあわやのシーンがあった。

「日経賞のあとは北海道に戻してリフレッシュさせていました。蹄鉄を外して放牧したので、馬はリラックスできたようですよ」とはビッグレッドファーム真歌トレーニングパークの小林司さん。現在は1周400mのトラックコースでたっぷりと乗り込んだあと、全長1500mの坂路を力強く駆け上がっている。

「トラックコースでの乗り込み量は、ここでも1、2を争います」と意欲的。そして坂路では「ハロン15秒を目安に。そして週に2度の追い日にはハロン13秒台を楽にマークしてくれます」という。

このあとは札幌競馬場に移動し、門別競馬場で行われるブリーダーズゴールドカップを目標にするという。「6歳になりましたが、馬体だけでなく、気持ちもまだ若いです。じゃれついて、かみついて来ることもあります。でも、本質的には扱いやすい馬ですよ」とスタッフの小林司さんが言う。「ダート重賞は層が厚いので、賞金を確実に加算して、秋の大きいところを狙いたいですね」。この秋は、一皮むけたマイネルアワグラスを見ることができそうだ。

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